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               築地市場や魚と流通に関する話題

秋鮭大豊漁でイクラ相場安
平成13年11月17日

今年のイクラはお買い得
 
 一昔前まではイクラと言えば、国産秋鮭の塩イクラ
がほとんどだったが、近年は醤油漬けに嗜好が移って
きている。
 また原卵も秋鮭やチャムにとどまらず、マス卵やトラウト
など「イクラの形をしていれば何でもアリ」の様相。

 今年は秋鮭の大漁で秋鮭原卵のホンモノ、良いイクラ
が安値で使えそう。

 このところ永らく高値相場が続いていた魚卵相場ですが、北海道産秋鮭が記録的な大豊量見込みとなりやや変調の兆しです。
 あきれる程の高値推移だったタラコ原卵と並び、同じく高値推移だったイクラですがこのところ価格は急落し、久々の安値で推移しています。
 今年のイクラは、はっきり言って”お買い得”です。

最近のイクラ相場の推移
 最近までのイクラ相場は、秋鮭漁が一昨年に続き昨年も不調だったことなどから、道東産の良品で¥6000/kg(築地での卸売り価格)を超える高値が続く状態で推移してきた。
 全体の供給量が確かに少なかった事もありますが、業者間での高値見込みからの仮需要もあったようです。(高値在庫を大量に抱えた業者は今非常に苦しんでいる。)
 また流通の変化で、回転寿司チェーンなど大手外食チェーン向けのベンダー業務を行なっている卸売業者は、責任上欠品させるわけにもいかず、高値を承知で新シーズンまでの量をとりあえず手当てをせざるを得ず、その動きが無いもの高に拍車をかける悪い循環になったという面もあった。
 一昔前まで、我々市場流通がもっと元気だったころには、中間業者が供給の”ダム”となり、同じイクラの中でも品質による評価をきちんと行ない、結果的にそのシーズンのイクラの供給は旨くしあがるという事が多く、最近のようにロシアマス卵まで含めたミソもクソもみな一緒に高値推移などという事はあり得なかったのですが、これも流通の近代化?!の結果という事で仕方ないのでしょうか。
 さて、国内の秋鮭が不漁に終わりイクラ・筋子の減産から、近年市民権を得てきた「ロシア冷凍原卵」の価格も高騰し日本サイドは使い難い価格帯を押し付けられる事になった。また、アラスカ、カナダ産のチャムについても当初豊漁見込みで期待されていたにも拘わらず期待に反しサマーチャム・フォールチャムともに予想外の不漁となり、この夏のイクラ需給は、不景気の販売不振の中にあって供給タイト感からの高値推移が続く事になった。ただし、北米産についてはチャムは減産になったものの、市民権を得たロシア産の実績を追いかける形で「マスイクラ」がかなり増産され、チャム・マス合計3000トンの生産となり、チャムの減産のかなりの部分を埋め合わせたと言われています。
 こういう厳しい状況の中で、今年の秋鮭が予想外の大豊漁となり「イクラ」「筋子」の相場は一挙に急落することとなったわけです。


今年の秋鮭は史上2番目の大豊量見込み
 今年の秋鮭漁はここ数日は以前ほどの数量は纏まらなくなっており、急にペースが落ちてきたとは言うものの、最終的には北海道内では16万トンに近い水揚げになると予想されている。これは史上最高だった1995年・平成7年には及ばないものの(167,621トン)史上3番目の記録的な豊漁となりそう。
 また、三陸での秋鮭漁についても、ここ数日はペースダウンが急ではあるが、累計昨年比で3割増以上と大漁間違いなしの展開となっている。

今年の秋鮭は95年、96年に次ぐ豊漁見込み。
(他に三陸産も豊漁見込み)


親の消化は生出荷増と対中国向け輸出で対応
 これ程の大漁に対応し、イクラはともかく”親”の消化をどうするかが毎年問題になるが、切り身商材としては競合する輸入養殖鮭鱒がこちらも秋鮭を上回るかつてない激安値での大漁供給、色目と脂分で劣る国産秋鮭に勝ち目は全くない。
 このため北海道の産地の司令塔的存在である北海道漁連では、数年前から行なっていたブナ系の処分としての対中国向け輸出を増やすのはもちろん、今までフレーク原料として中国に向けられていた北米産チャムの減産を埋め合わせる形での対中国向け秋鮭輸出も今年は増えそうな情勢。
 一般にはあまり知られていない事だが、スーパーなどで安値で販売されている「鮭フレーク」は、近年コストの安い中国で一次加工し国内に持ち込んで最終製品にするケースが多くなっている。この原料は価格的に安い北米産のチャムなどを中国へ持ち込み使うケースが多い。
 また塩蔵、生鮮という区分では、コストをかけないローリスクな流通としての「生鮮出荷」が当然ながら大幅に増加している模様。この生鮮出荷によりラウンドで出荷された部分については、塩蔵イクラにカウントされないので、秋鮭の生産増の割には塩蔵イクラは増産規模は意外に少ないという見方もあるが、生出荷された部分についても、何らかの形でイクラとして消化しているわけで、実際、当社の得意先のデパートの現場では、生鮮出荷の原卵を醤油漬けに加工、安値で目玉商品として販売し行列ができる程の人気商品となっているというケースもある。結局のところ、産地での生産統計はともかく親魚の分だけ卵の方も何らかの形で生産されているわけ。(当たり前のことだが。)

イクラの嗜好の変化
 一昔以前までイクラと言えば国産秋鮭の卵を原料とした「塩イクラ」と決まっていましたが、近年は「醤油イクラ」の人気が高まり需要が変化しています。「塩イクラ=安物  醤油イクラ=高級品」 と考える消費者もいるらしく、私も最近、このような主張をするHPを見つけて仰天した覚えがあります。多分、北海道旅行にでも行った際に醤油漬けイクラを食べて、「なるほど、北海道の人達は醤油漬けのイクラを食べるのか。醤油漬けの方が高級なホンモノだ!。」などどカン違いしたのでしょう。
 イクラでも塩イクラが主流だったわけは、醤油漬けの場合、保存が難しく流通に乗り難いという事がありました。(解凍後の足が速く、すぐいたんでしまう。)
しかし近年、加工技術や保存料などの進歩で醤油漬けでもかなり保存がきくようになり、また醤油イクラは醤油液に漬け込む分重量が増えるため歩留まりが良く、同じ原卵からの生産量が塩イクラに比べかなり多いため価格を安く供給できるという事情もありました。
 また国産秋鮭の場合、稚魚の放流パターンが親魚の方の品質を重視して早期群の放流数を多くしたため、漁獲量の方も卵が未熟な9月頃の早期の漁獲が増え、このような未熟な卵は醤油漬けにはできるが塩イクラに向かず、結果的に醤油漬けの生産量と消費量を伸ばすことになりました。

 繰り返しになりますが製造する立場で言えば、塩イクラを作る方が、醤油イクラを作るよりはるかにデリケートで難しいのです。
 塩イクラは「味付け」がない分、原卵の違いがはっきり出る。原卵の時期も良い時期のものでないと”皮”の質が柔らかすぎたり硬すぎたりしてしまい難しい。そして何より歩留まりが悪く製造コストが高くつくという事があります。
 現在のように醤油漬けイクラが幅をきかすようになったのは、「添加物の進歩のおかげ」という面が強いのです。

マス卵やトラウト卵に向く醤油漬け製法
 また近年、秋鮭の不漁によりイクラの供給がタイトになり、需要サイドでは回転すしチェーンなどは安値のイクラのニーズは相変わらず強く、その対応として従来のシロサケ以外の”ロシアマス”や”トラウト”などの冷凍原卵を原料とするイクラが急激に増えてきました。
 これら新顔の原卵は、もともとシロサケの卵に比べて味にクセがあり、従来の塩イクラの製法ではイクラに向かないとされてきました。(とは言え、「イクラ」とはもともとロシア語で魚卵の意味であり、ロシア人は日本人とは逆にマス卵の方を好む。)
 しかしこれらの原卵も、醤油漬けにしてしまえば醤油の味に消されて本来の味のクセもそれほど問題とはならず、冷凍原卵をイクラに加工する製造技術や長期保存の技術も進歩し、現在ではこれら”マスイクラ”や”トラウトイクラ”は安価なイクラとしてすっかり市民権を得た形となっています。

高値在庫に苦しむ流通業者
 お伝えしたように、今年は秋鮭の豊漁で、国産秋鮭を原料とするホンモノのイクラを安く提供できる環境となりました。
 しかし、大口の需要家をかかえる流通業者の中には、高値のヒネイクラを大量に抱えて苦しんでいる会社も多く、彼らの在庫の中には品質的に劣る「マス卵」や「トラウト卵」も含まれるため、末端ユーザーはこれからのイクラの仕入れには品質面と価格面で注意が必要となるでしょう。
 
 業界では、ロシア産の冷凍原卵の輸入商談もストップするなど混乱が波及しており、三陸など秋鮭漁が最終的にどういう形で終わるかを含め、イクラ相場はしばらく目が離せない状況が続きそうです。

イクラの卸売価格;北田本店(※築地市場内の卸売価格。プロ向けです。)


追記:(速報)北海道内の秋鮭漁は集計すると15日の時点で、すでに16万トンの大台に達した模様。 


(北田喜之助)


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