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               築地市場や魚と流通に関する話題

中国の鰻蒲焼事情(1)
平成13年07月11日

中国福建省の鰻養殖事情と蒲焼加工工場のレポート。

ウナギの全自動蒲焼ライン。(全長70m以上!)

今や年間商材となった中国産鰻蒲焼
日本人の夏の食生活には欠かせない”ウナギ”ですが、そのウナギも今では中国、台湾などの養殖物が大量に輸入されるようになっています。 
このうち中国産の加工鰻は、年間7万トン以上が日本に輸入される大型商材であり(2000年鰻年度※@)、この膨大な数量の鰻蒲焼の生産から輸入販売にかかわるビジネスは、今や市場規模が1000億円をはるかに超えるビックビジネスとなっている。 
 今回は中国各地に多数あるメーカーの中から、当社が選定した福建省福州市のメーカー「聡合冷凍食品有限公司」の鰻蒲焼工場、および鰻(ジャポニカ種)養殖事情をレポート。
 また福建省の内陸の町、南平からは、ヨーロッパ種(アンギラ種)の養殖事情と蒲焼事情をレポートします。

※@ 鰻年度:9月〜翌8月末までを1鰻年度としている。
2000年の通関統計によれば、調整品うなぎ(蒲焼など)の輸入量合計71,313トンのうち中国産は61,416トン
また活うなぎの輸入合計14,356トンのうち中国産は13,220トンを占める。

ウナギ業界の2大関心事、”セーフガード”と”原産地表示”。
 鰻の流通業界での今年の最大の関心事は、なんと言っても中国産鰻に対する”セーフガード(緊急輸入制限)”の発動の行方という事になるでしょう。
これについてはマスコミ等もさかんに報道されているので詳しくは触れませんが、結論だけ言えばセーフガード発動は当面考えられず、この問題で業界は多少混乱したものの、今年も結局安価な中国産蒲焼鰻製品が大量に輸入される事になると思われます。
 また改正JAS法により「原産地表示」が厳しくなった影響から、国産うなぎの需要が急増している状況ですが、この傾向は今年もさらに顕著になってくるものと思われます。
 この二つの問題については、できれば再度とりあげます。

聡合冷凍食品有限公司(福州市)
 福建省の沿岸の町、福州市は真新しい近代的なビルが立ち並ぶ福建省最大の都市で、街は活気にあふれている。
 今回訪問した「聡合冷凍食品公司」(FFFブランド)は、この福州市の中心部に程近い工場団地の一角に位置し、近代的で大規模な工場を有する。更に驚くべき事に、この近代的で衛生的な工場はHACCPとISOの認定をも取得している。
 蒲焼の工程、設備などについては当然ながら日本の技術と指導に拠っているが、資本はマレーシア資本(華僑)と中国との合資。
 中国というと、とかく日本に比べて「遅れている」とか「不衛生」などという先入観をいまだに持っている日本人も多いが、実際に中国へ行き、このように近代的で発展している都市と衛生的な工場を目の当たりにすると、カルチュアショックを受ける事になるのは間違いない。

右:福州市市街
ピカピカのビルが立ち
並ぶ発展中の都市。
聡合冷凍食品有限公司の工場外観

 HACCP取得工場の蒲焼ラインは全長70m以上
 「聡合冷凍食品公司」(FFFブランド)の工場はハサップとISOを取得している近代的な工場で、ここで数百人の女工さんの手によって近郊の養殖池で育てられたウナギの蒲焼き加工が行なわれている。
 ここで生産されているのは主に日本人が昔から食べていたウナギと同じジャポニカ種で、これを原料に長焼、串焼き、白焼きを生産し、ほぼ100%を日本向けに輸出している。
 中国というと人件費が安いというメリットをすぐ思い浮かべるが、実際、現地の平均的なサラリーマンの月収は700元(約10000円)程度という話で、近年あらゆる種類の製造業が競って中国に工場を移転するのも頷ける話ではある。
 とは言え福建省でも近年の経済発展により人件費も急速に高騰し所得も増えているそうで、福州市内には最近日本にも進出して話題になったカルフール(中国語で「家楽福」と言う)やメトロ(同じく欧州系大型スーパー)などがあり、結構な数のお客でにぎわう光景が見られる程豊かになってきている。
 
 中国には福建省や上海近郊、そして内陸部ではアンギラ種の養殖と各地に数え切れない程の養殖業者と加工業者が存在し、そこで生産されるウナギ製品の殆どは日本向けとなっている。
 ここFFFの工場も、近代的で巨大な生産設備は日本製なのはもちろんの事、加工や販売のノウハウなど一切を日本の商社の指導に拠って運営されている。
 中国にある中国企業の工場とは言え、そもそも日本企業の都合で始まり存在しているビジネスなわけで、実質的には日本企業による開発輸入の一形態と言う事になる。
 この工場では近郊に多数ある養殖業者のウナギを買い付け(ブローカーが介在するケースが多い)、総勢200名以上いる女工さんが裂き加工をした後、白焼き、蒸し、たれ付け、蒲焼の工程となるが、裂いた状態でラインに乗せた後は全自動ライン(全長70m以上!)で蒲焼きの状態まで加工される。その全ての工程は徹底的な衛生管理のもと運営されている。
(この点については、中国にはもともとウナギ産業の伝統がなかった為に、従業員の中に作業に対する先入観がなく、衛生面でのマニュアル化がかえって受け入れられ易かった面もあるという話だった。)

ウナギ裂き工程
  
ウナギを裂く工程は今でも機械化できず全て手作業となる。中国の人件費コストの安さが活きる場面だ。
 ウナギ裂きの技術は日本同様「特殊技能」で評価も高く、ここの女工さん達の収入は1000元程度(13000円/月)と現地の平均に比べかなりの高収入。出来高払い制度の為、中には2000元以上を稼ぐベテランもいるとか。
 好景気の時は加工業者の間で、こうした女工さんの引き抜き合戦もあったそうで、アラスカ筋子製造が全盛期の頃のテクニシャン引き抜き合戦と似たような状況と納得
串刺し:
手間とコストのかかる工程だ。今ではこの種の加工(焼き鳥など食品全般)が中国やタイなど海外へ移転するケースが激増している。
上右:蒲焼用串
上左:きも串
 蒲焼用にウナギを裂けばその数だけのキモが残る。大量に発生するこのキモの商品化と高付加価値化が課題。

下処理:手作業工程

●養殖業者からウナギの買い付け(ブローカー経由?)
      ↓
●3〜4日餌抜き。(この間エサを与えず、魚体から餌を抜く。)
      ↓
●サイズ選別(1回目)
      ↓
●裂き加工→串刺し加工(※上の写真)→キモは串刺し工程へ→キモ串焼きラインへ(別ライン)
   ↓       ↓                  
●蒲焼ラインへ載せる

※ウナギの裂き方は 1.関東向け背開き 2.関西向け腹開き無頭 3有頭 と長焼用だけでも3種類になる。

上:HACCP工場内では完全防備スタイルで。
左:人手で裂いたウナギをラインへ乗せれば
  70mのラインを出る時には蒲焼に仕上がる。

自動コンベアラインでは
●白焼き→●水をかける→●蒸し工程(加熱)→●たれ液をくぐらせ”焼き”工程へ ×これを3回繰り返す。
●ベルトに載ったまま急速冷却機へ→●箱詰め工程へ

たれ付け工程:(これを3回繰り返す)
たれは全て日本のたれ専門メーカー製造の日本製。
蒲焼海外生産の黎明期に、たれメーカーは、中国産ウナギに合う「冷めてもおいしいタレ」を研究し、現在のような濃い口の粘り気の強いタレができた。
 中国のウナギ特有の”泥くささ”を消し、蒲焼の状態で解凍して陳列してもタレが流れ出さないよう粘り気を強くしてある。


白焼き→水をかけて加熱(蒸し工程)
こちらは「キモ串焼き」のライン 急速冷却機へ

箱詰め工程
●自動選別機でサイズ別に選別。→●異物混入、キズなどのチェック→●箱詰め→●急速凍結機で冷凍→●出荷

左:自動サイズ選別機
右:最終チェックし、箱詰め


福州市近郊の養殖池にて。
ここは福州市近郊のジャポニカ種の養殖池のひとつ。
写真では良く分からないが、ジャポニカ種の場合、やや濁った水の方が住み心地が良いらしい。
経済発展で急速に市街化が進み、養殖池の近隣にも新築のアパート群が立ち並ぶ。



(向かって左:北田 右:大金)


次回へ続く

次回は福建省の内陸の町、南平からヨーロッパ種(アンギラ種)の養殖事情のレポートです。

(北田喜之助)

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