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               築地市場や魚と流通に関する話題

新物時鮭は産地高(根室からレポート)
平成13年6月4日

昨日、フェロー諸島に続き北海道出張から帰京したところです。水揚げがようやく本格化した道東鮭鱒のレポート。

根室の市場のセリ風景。
昔とほとんど変わらず、築地より数倍活気がある?。
買い手は地元根室や道内他地区の加工業者など。
買い手の数の多さに注目。
水揚げされた時鮭
根室五港最大の市場”根室”の市場。
この,日久々にまとまった水揚げ。但し型は小型が多い。

 今年の新物時鮭は「産地高-消費地安」
 今シーズンの道東鮭鱒(根室、釧路など道東を拠点とする漁船が漁獲するこの季節の時鮭、紅鮭、マス、スケなどを指す。)は、漸く本格化してきました。しかし今年は、4月27日の例年より早い解禁だったにも拘わらず、浜値の高値が例年になく続いています。反面、消費地では扱い業者は我々仲卸を含めて売れ不振で元気なく、消費地相場は低迷が続いている状態です。
 6月始めのこの時期の産地ではハシリの頃の高値が一段落し、本格的な販売を見込んでのこなれた相場形成になっているのが普通なのですが、今年は高値続きで産地-消費地の逆ざやが続いています。
 
 根室には、根室、落石、花咲、など五つの港があり、まとめて”根室五港”と呼ばれています。
 その中で最も大きな港、私が見た6月2日の根室では、久々の大型船の入港で水揚げが多く、根室全体では140トン程度の量となってセリ場では活気ある取り引きとなっていました。但し価格の方は産地メーカーの期待するほど下がらず逆ざや必至の価格に、「何で初めから損する仕事するのかな〜!。」といった嘆息が聞かれました。
 この日の水揚げはベニの少ない2区の魚ということで、ベニはほとんどなく、トキも1.8kg程度以下のサイズが大半で大型の良型は少なかった様子。
 また根室のセリ場全体を見まわしても、ベニはほとんど無く、トキでも定置の時はほとんど皆無、スケ(キング)が大型の良型が多いのが比較的目を引いた程度といったところでした。また今年は釣りのトキもほとんどないという話で、国産の良い鮭を売りたい我々としてはガッカリというところです。
 とは言えシーズンはまだこれから、今後の漁と相場展開に期待したいところです。
 

年々低下する道東鮭鱒への関心
 一昔前までは、我々のような鮭鱒を扱う業者は、このシーズンの道東鮭鱒の漁模様と相場に大きな関心を寄せたものでした。
 しかし最近では道東鮭鱒の話題は昔程のニュース性がなく、特にスーパーなど量販店では特にこだわったスーパーは別としてはほとんど無関心という程度の商材になってしまいました。
 資源量が限られ、日本側の大規模な減船(補助金付きの募集に応募が殺到する程)更に近年ロシアが資源管理と密漁に厳しい態度に変わっている事で”紅”など商品価値のある魚の漁獲量が年々縮小し、仕方の無い事ではあります。
 これは道東鮭鱒に限った話ではなく、同じく輸入養殖ものにシェアを奪われたアラスカ”カッパーリバー”の紅鮭も、今ちょうどシーズンにも拘わらず昔程の関心を集めていません。
 また築地市場でも、若手仲卸の一部で「シーズンだけでも良いから時鮭のセリ入札を復活させよう。」という声もありましたが、結局実現することはありませんでした。
 一方、ユーザーの量販店、外食チェーンなどでは、品質、サイズ、価格が安定し、安定供給を計画しやすい輸入物の養殖銀鮭や養殖トラウトにニーズが完全に移行してしまっています。供給量も相場も不安定で、旬のアピールができるとは言えほんのわずかの時期しか魅力のない道東鮭鱒をあまり扱いたがらなくなってしまっているのです。
 また近年のリストラで売り場が手薄になり、販売までに手間のかかるセミドレスの塩鮭は売りたくてもなかなか扱えないという事情もあるようです。人手の手薄な量販店では手間のかかる商材は扱いたくないというのが正直なところのようです。
 とにかく、一旦売り場を縮小したアイテムは、旬であってもなかなか売り場を回復できないのが現在のスーパーの常で、道東鮭鱒と輸入養殖鮭鱒との売り場の取り合いでは、輸入養殖鮭鱒の優勢が続く事になりそうです。

根室漁港の岸壁。 珍しい「マス筋子」東京には滅多に出回らない。
スケ(キングサーモン)。手前は推定15kg超サイズ。 時鮭の加工工程。当店向け。(根室市内小林商店)
加工前の時鮭 フィレー、振り塩。その後熟成。
当店店頭の新物時鮭(丘時) 半身フィレー真空パック製品となる。

自信を持って販売できる良い鮭とは?。
 当店のような鮭鱒専門店が自信を持って販売できる良質の天然鮭としては「定置の時鮭」「釣り時鮭」「カナダトロール紅鮭」などが挙げられます。

●定置のトキ
 これは鮭の種嶐としてはシロサケで普通のトキと変わらないのですが、品質は全く別物と言って良く、本格的な味覚という意味では鮭の最高峰だと個人的には思っています。
 良く出回っている”目近””ケイジ”も良いのですが、”もどきモノ”が多く、目近の場合、普通の秋鮭の中から品質のよさそうなものを選んで「目近」として販売している業者も多いようです。また”ケイジ”の場合、もともと流通させて商売にするほどの量があるわけでもなく、グルメ好きのマスコミ報道でブーム先行のバブル状態というのが真相でしょう。
 やはり伝統的な塩鮭鱒としてはこの”定置”が一番、当社はこれ(定置時)をギフト用として販売しようともくろんでいたのですが、今年はこれが全くの不漁、期待外れのようです。
 
●道東べに
 道東鮭鱒と言えばこの”ベニ”が関心の中心。これの塩蔵はいわゆる”ホンチャン”のべにとなり、輸入物とは一線を画す本格的な商材。品質的には間違いなくオススメできる高級品。道内や紅を好む関西で特に人気が高い。
価格が張るので、近年ロシアの資源管理が厳しさを増しているので日本船による水揚げは減っている。
一方ロシア船に漁獲され、日本に持ち込まれる「ロシア紅」は選別や加工に問題があり、日本の業者とのトラブルが絶えない。

●釣り時鮭:
 釣りものの時鮭。定置ほどではないが品質の高い時鮭。わざとらしく口に釣り糸をくわえて出荷されたりする。
  今年はこれも殆ど無い。

●カナダトロール:
 カナダのBC州で獲れる天然の紅鮭。中でもフレーザー川系統の紅鮭は脂乗りが良く、高品質で定評がある。
 特にトロール漁法で漁獲したものは網による傷や打ち身が無いので肌目も良く、紅鮭の最高級品と言われている。
 一昨年、私はBC州にこれ目当てで出かけて行ったのですが、資源の問題で全く漁獲が少なくがっかりさせられたのは以前レポートした通りでした。昨年は更に少なく2年続きの不漁で、このままではカナダベニのマーケットが消滅してしまうのではないかと心配するほどでした。
 このカナダのベニが今年は2年ぶりに復活しそうとの情報で、大いに期待しているところです。
 このカナダのベニがまちがいなく供給できるとすると、年末ギフト向けなど品質にこだわるニーズに応える事ができるのですが、残念な事に、カナダの場合、漁の良否がはっきりするのが7月に入ってしまい、この時期になると多くの百貨店でパンフレット印刷などの関係で年末歳暮企画に間に合わなくなってしまうという問題があります。
 しかし当社の場合、店頭やこのインターネットなど臨機応変にできる媒体を使っての販売も可能ですので、魚が良ければ是非扱いたいと考えています。

 以上4種の鮭は、全て天然物のため安定供給が難しいという難点があります。
 昔のように零細な魚屋が数多くあった時代は、その時の供給と相場に合わせて臨機応変に販売する事も可能で、旬の味を提供できたのですが、現在のようにスーパー量販店が大型化すると、どうしてもロットがまとまり安定供給可能な商材しか扱わないという事になってしまうわけです。

養殖鮭の品質向上
 前回のこのトピックスで、売れ筋の養殖サーモンの悪口らしい事を書いてしまいましたが、近年の養殖技術の向上はすばらしく、餌の改良などにより、養殖ものにつきものだった「養殖臭」のような欠点も殆ど克服され、脂肪分が多い事もあって現在の消費者に広く受け入れられ、販売の主流になっているのはお伝えした通りです。
 現在の消費者は”甘塩志向” ”脂のり志向”であり、これにぴったりの特徴を持つトラウトなどの養殖鮭が、当然のこと店頭で圧倒的に売れている現実があります。
 既に一部の業者は始めていますが、お歳暮などギフト向けにも、養殖物(但し特別高品質なもの)を用いる事を、そろそろ真剣に考える時期に来ているようです。

極上の養殖トラウトがあった!。
 時代の流れとは言え、養殖ものでも品質にはこだわりたいもの。また養殖物の場合、「安全性」も心配です。
 私が先週行ってきたデンマーク領の北極圏の島”フェロー諸島”。そこでとびきり極上で安心なトラウトを見て来ました。次回はこれをレポートします。

ChartObject 塩鮭と生サケの一世帯当たり消費金額(円)


(北田喜之助)


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