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               築地市場や魚と流通に関する話題

口蹄疫パニックの余波
平成13年3月24日

竃k冷 平和島工場
 東京団地冷蔵株式会社(東京都大田区)内
(6,000設備トン)

 当社グループの冷蔵倉庫部門。
 ここの冷蔵倉庫はチキンを含め畜肉の扱いが多い。

 最近英国などヨーロッパで発生した”口蹄疫”は、単に食肉という枠を越えて、さまざまな分野へ影響を及ぼしているようです。
口蹄疫そのものについては頻繁に報道されているので既にご承知と思いますが。

口蹄疫
 口蹄疫は感染力の強い病気だが、牛や豚、羊などヒズメが二つに割れている家畜だけに感染する病気で人間には感染する事はない。ただし人間は病原菌のキャリアとなる可能性がある。
 口蹄疫に感染した家畜は直ちにバタバタと死んでしまうという事はないが、家畜の生産性が大幅に悪くなるので畜産農家には大変恐れられている。
 口蹄疫が発生した農家では、その周辺も含め家畜の出荷ができなくなるのはもちろん、その地域全体の家畜が強制的に処分(焼却してしまう)されるので、農家にとっては経済的に大打撃になる。
 日本でも昨年(2000年)3月に北海道と宮崎県で発生したが、迅速で徹底的な対応によりそれ以上拡大する事なく記録的な速さで終息した。

ヨーロッパ
 今回のヨーロッパの口蹄疫は、最初英国で発生した。
 英国では国内での家畜の移動を禁止し、ロンドン畜肉市場であるSmithfieldも開店休業状態で、この影響で畜産農家だけでなく流通業者など関連業者の経営破たんも心配されている。
 また笑うに笑えぬ話として、次のような話も伝わって来ています。
 ・競馬開催の見合わせ(汚染馬との接触を危惧)
 ・公園の閉鎖;National Trust(畜産業と接触のある人間を介しての感染を危惧)
 ・アイルランドは国民に英国への旅行を極力見合わせる様に呼びかけると共に、ラグビー欧州対抗戦のアイルランド対卯エールズ戦を見合わせた。
 これらの影響も考えると口蹄疫は、英国経済に90億ポンド(GDPの1.1%相当)の打撃となるという話もある。

 基本的に魚食民族の日本人には今ひとつピンと来ない話ですが、欧州でのパニックぶりが分かる話だと思います。
 この恐ろしい口蹄疫は、欧州大陸(フランス、オランダ、デンマーク、ドイツなど)への拡散が心配されていたわけですが、水際で食い止める努力はしているものの、例えばドーバー海峡を渡る渡り鳥や、北からの季節風、あるいは英国からの旅客機で食べ残しの機内食を介しての感染など考えればきりがないのが現実。
 そして3月12日にはフランスでもMayenne県で6頭の羊が感染しているのが確認され、ついに欧州大陸拡散の心配が現実化してしまいました。
 これが更にドイツなど他国へ拡がると大変なことになります。このため周辺国では国境を通過する車からの感染を心配して国境の通路に消毒マットを敷くなどピリピリした状態になっています。
 また海を越えたアメリカでは、汚染国からの輸入中止はもちろん、例えば汚染地域からの旅客機の乗客がタラップを降りるた所で消毒マットの上を歩かされるといった光景も見られる程警戒しているようです。
 実際の話、口蹄疫がアメリカに発生したら、これはエライ事になるのは間違いありません。(安いハンバーガーが食べられなくなる?!)

口蹄疫パニックの余波
 ここまでの話は肉の話、しかも海外での話で日本には関係ないように思えます。しかし我々にも目に見えないところで影響が出ているのも確かです。
 当然の話ですが、ヨーロッパでは畜肉の消費が激減し、代わりにチキンや魚など他の食品の消費が増えています。特に影響の大きかったのは豚肉で欧州では大手スーパーでも売り切れたり商品の確保に走り回る事態となっています。
 また消費の伸びたチキンや魚は価格が上昇してきています。
 日本人にも関係が深いヨーロッパ産のアトランやトラウトなど養殖鮭鱒は、この影響もあって価格が強含みとなっており、以前このトピックスでご紹介したように養殖鮭鱒全体の相場が底打ちから上昇局面だっただけに、また一つの強気材料となってしまいました。
 養殖鮭鱒については以前トピックスでご紹介した時点から相場は更に上昇し、現在上げ相場はやや一服といったところですがそれでも底値からは20%近い上昇となっています。これに更に追い討ちをかける事態にならなければ良いのですが。

そして冷蔵倉庫は満杯に
 国内でもハム・ソーセージメーカーなど畜肉を大量に使用する企業は、世界的な原料不足を心配して豚肉などの原料の在庫積み増しに走るようになり,原料の調達先を変えたりして営業に必要な分の原料を確保しようとしています。
そしてこの結果、原料肉を保管している冷蔵倉庫は在庫が急増し、今では湾岸地区を中心にほぼ満庫状態となっています。
冷蔵倉庫の中でも特にハム・ソーセージメーカーの利用が多い会社では特にこの傾向が強く、2月後半以降の入庫急増でそれまでガラガラだった東扇島地区も含め今ではほぼ満杯となり、新規の得意先の入庫はお断りといった会社もあるようです。
 冷蔵倉庫業界は一昨年までの供給過剰と料率ダンピングの傾向に一応の歯止めがかかり、このところ利用率も着実に上昇してきたところであり、今回のこの”口蹄疫”で在庫増加の傾向はほぼ決定的となりました。
 冷蔵倉庫業界にとってこの口蹄疫騒動は、豚肉のセーフガードと並ぶ関心事になりつつあるようです。
 当社の冷蔵倉庫部門である竃k冷でも畜肉の扱いが多い平和島工場で、チキンなどの在庫が増加傾向にあるようです。また平和島地区全体でも昨年比で更に在庫が増加している状態です。
 また水産物主体の冷蔵倉庫(当社 北冷 かちどき工場など)もともと水産物の在庫が多く庫腹がタイトだったところへ、この影響が加わり在庫率が上昇傾向となっています。
 一方、今まで修正しようとしてなかなか果たせなかった”料金の値上げ”についても、この状況が追い風になり値上げが実現するケースも序々に増えると期待されます。冷蔵倉庫各社は、荷主企業との値上げ交渉を従来以上に進めることになると思われます。

以上、ヨーロッパの口蹄疫パニックの余波についてのレポートでした。

LINK
(社)日本冷蔵倉庫協会

冷蔵倉庫の利用状況、保管貨物の状況の各種統計あり。
※在庫率:
冷蔵倉庫の混み具合を示す指標のひとつ。冷蔵倉庫の保管能力(設備トン)に対する受寄貨物重量の割合を示す。
  容積に対する内容重量の軽い貨物(業界では「比重が軽い」とか「カサ高貨物」などと表現する)が増えたため、現在ではこの数値がおおむね35%を超えるとほぼ満庫状態と言って良い状態となる。

追記

 このレポートをUPした直後(24日の午後)報道によると、農水省は口蹄疫対策として発生国のみならずEU全体からの豚肉の輸入を禁止する措置をとった模様。
 この結果、冷蔵倉庫業界にとっては年間数万トンの入庫が消滅することになり、現在の満庫状態からの反動も大きなものになりそう。
 冷蔵倉庫にとってはセーフガード発動の場合と同じく、先行きの供給不安だけがあって結局杞憂に終わるのが一番良いのだが、そうは旨く行かないのが常。


(北田喜之助)


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