目次へ  
               築地市場や魚と流通に関する話題

セリ場の時間(2)-北洋物業界の場合(塩魚セリ場)。

前回の続き

平成12年7月19日

 前回は鮮魚のセリが復活した事を取り上げましたが、今回の新市場法下での業務規定では、北田本店の属する北洋物業界のセリ場(塩魚)でも変化がありました。

北洋物業界のセリ場(塩魚)はAM4:00から。
毎日早朝からセリ場に見本を上げ、開封し再び梱包するのは大変な作業だろう。
毎朝同じ商品を開陳するのであれば、ロット毎に保管場所の冷蔵倉庫での
「品見検品」で済ませることもできると思うのだが・・・。


塩魚のセリ場はAM4:00から。
 当社(北田本店:丸北水産)は、築地市場の中では鮭、魚卵などを扱う”北洋物業界”に属しています。そしてこの商材を扱うセリ場は塩魚のセリ場と呼ばれています。
 水産物はマグロやアジ、さんまなどを扱う「鮮魚」と塩蔵品、練り物(かまぼこなど)、干物などを扱う「加工」に大別されますが、北洋物業界は「加工」のカテゴリーの一部という事になります。
 今回の業務規定では塩魚のセリ場は、加工品を扱う他の加工5業界と足並みをそろえる形で、午前4:00にセリ場の開場という取り決めになりました。(相対などの”販売時間”はam0:00から)。
 7月1日から新しい時間帯でスタートしたわけですが、スタート早々という事もあり、セリ場は整然と粛々と取引が行なわれている様子でした。しかし仲卸の姿はやはり少なく、寂しい事は以前と同じでした。
 セリ場で会った某荷受会社の重役は、
 「どうです北田さん、セリ場は。最初のうちはしっかりやっているでしょう!。」
 と半ば冗談めいた言葉。

 北洋物業界では、「セリ場」とは言っても、今回復活した鮮魚や一貫して100%セリを行なっている大物(マグロ)業界とは違い、全量が”相対取引”によって値段値段が決まり取引される事になっています。これは我々の扱う商材が、新市場法においては他の加工品と共に全くセリを行なわないで良い3号物品に分類された事によります。
 セリを行なわない「セリ場」というのも妙な話ですが、要するに相対取引をするために現物を確認する、そのための展示という意味合いの「セリ場」と言う事になります。
 「全くセリを行なわない」という事に関しては、北洋物業界の内部でも話しましたが、当業界の場合、既に永年にわたり全量を相対取引で取引するのが常態化して慣れっこになっていて、鮮魚業界のようにセリ取引を復活セヨという話は全くと言って良いほど出ませんでした。

   北洋物で実際にセリが行なわれたのは、いまから10年以上も昔にさかのぼります。

 当時、私の先代;北田喜蔵が北洋物業界の会長を努めていた時でしたが、ほんの一時期だけ秋鮭の「セリ」が復活したことがありました。
 十数年前の当時、既にこの業界は相対取引が主体になっていて、入札取引が「身欠きニシンや開きホッケなどで細々と行なわれているだけで、セリは全くおこなわれていませんでした。そんな中、その頃供給が急増して販売が厳しくなっていた「秋鮭」をシーズン中だけでもセリで取引きして市場での販売を活気つけようという事でセリ取引を復活させました。
 この時は市場の仲卸も意欲的で、また当時は荷受各社も我々と同じ意気込みで、「仲卸のみなさんがヤル気なら荷受も一緒にやりましょう。」と積極的にセリ場の運営を行なってくれて、塩鮭のセリ場に久しぶりの「カランカラン」というセリ人の鐘の音が響き、荷受各社を時間を区切って移動しながらセリをする「移動ゼリ」方式によるセリが実際に行なわれたのでした。
 しかしその頃から、秋鮭は空前の供給過剰となり、「セリ」による販売では荷が裁ききれなくなって、せっかく復活したセリも翌年から再び中断してしまい今日にいたっています。
 その後の入札取引では、仲卸の販売力も著しく低下し(実際売れないのだから仕方ない?。)大量の上場があった秋鮭に「タダ」という札を入れるふざけた仲卸も現れたりして、セリ場でのセリや入札はそれ以来、すっかり姿を消してしまいました。
 最近でも、若手の間ではシーズン中に限り「時鮭」や「道東の紅」だけでも良いから「セリ」「入札」を復活させたいという話はありましたが、全く実現する気配はありません。
 十数年前に、荷受も巻き込みあれだけ盛り上がったセリの復活ですら、結局中断してしまったのですから、当業界では少なくとも従来のスタイルでの「セリ場の復活」は絶望的といえます。
 現在の荷受のセリ取引への意気込みは、この秋鮭のセリ復活当時とは比べものにならず、今回のセリ復活については、荷受各社は”お義理でつきあっている”という印象すら受けます。


セリ場の時間について
 今まで塩魚のセリ場は5:30頃に開かれていましたが、今回時間が早くなり4:00になりました。
 これは加工品を扱う他の業界と足並みをそろえた結果というわけですが、私にはどうも”中途ハンパ”な時間帯に思えます。
 今回の改正で多くの業界のセリ場の時間帯が早い時間帯に変更になりました。また、築地に入荷する魚の一定割合を先取りでなくセリ場に上場するという事も取り決められました。
 これは量販店向けの販売など買参や第三者向けの「先取り」に対し、少しでも歯止めをかけたいという仲卸の意向による事なのですが、今まで先取りで販売していた数量を、ムリヤリ50%とか何%とか割合を決めて仲卸にセリにかけるというのも、今の仲卸の実力を考えると無理があるのではないでしょうか。
 既に永年にわたり外堀を埋められるように流通の主導権を奪われて来た現在の仲卸では、たとえ入荷量の半分といえども荷が重いというのが現実なのです。
 仲卸としては、「今まで荷受が仲卸をないがしろにして買参ばかりを可愛がるから、そのせいで我々の販売力がなくなったのだ。」という言い分もあるのですが、因果はどうあれ現実は現実として受け入れ、対応しなければなりません。
 また同じ仲卸といっても、量販店にそれほど依存していない業者と積極的に量販店対応している業者との違いもあります。
 最近のスーパーなどは、競争激化から開店時間がドンドン前倒しになっていて、朝10時の開店に間にあわせようとすると、市場からの搬出時間をAM5:00〜AM7:00くらいにしないと間に合わず、それに対応する仲卸はそれこそ真深夜からデリバリーしないと間に合わないという事になります。一方、量販店を持たない仲卸は、自分達の売る分の魚だけ仕入れられれば良く、必要もないのにそんなに早い時間に出たくないというのがホンネで、今回はこの両者の中間をとったような時間帯になったという事です。
 結果として決まった今の時間帯(AM4:00前後)では、量販店に対応する仲卸には遅すぎ、そうでない仲卸には意味もなく早すぎるという事になってしまいます。
 
   当社の場合
 当社の場合スーパーなどの量販店の得意先も多く、以前は早朝からデリバリーを市場内で行なっていましたが、全部の業務を当日の早朝に行なうと、この狭隘な市場の中で、短時間の中で大量な業務をしまければならず、人手等のコストがかかり物流品質の面でも問題が多かったのです。
 そこで現在ではお得意先にはできるだけ「前日発注」をお願いするようにして、当社の竃k冷かちどき工場を利用して、ピッキングと荷揃えを前夜PM9:00頃までに済ましてしまうシステムで動いています。
 これにより当社は業務の平準化と出荷ミスを大幅に減少できています。またお得意先様からすれば、店頭での販売が一段落し翌日の発注をする時間(正午〜PM8:00)に、発注先の当社が業務中で誰かしら担当者がいるので便利という事でもあります。
 このような事情は多かれ少なかれ量販店対応している業者なら同じではないでしょうか。もしくは完全に深夜からの業務にシフトする事を覚悟して決断するか、という選択でしょう。

 夕ゼリにできないか?。
 もし実際の業務の都合から逆算して「セリ場の時間」を決めるのなら、今のような中途半端な時間帯でなく更に12時間前倒しして、前日の夕方(PM3:00〜5:00)にセリをしたらどうでしょうか。
 鮮魚と違い当社の扱い商材は、大部分が冷凍保管している商品であり、この場合は現物の伴わない「情報取引」の形でも良い(冷蔵庫での検品に替える)から仲卸、買参、第三者全てが一斉に取引する事にすれば「先取り等の問題も起こらず、市場参加者が全て対等に参加する形での公正なセリ場ができるのではないか?。(荷受が公正に取引しようという意思がないのなら話は別だが)
 この「夕ゼリ」というアイデアは、もう十年以上も前から頭にあって、数年前に大阪市場の同業者が全く同じ事を言っているのを聞いて心強く思ったこともありました。また、今回の業務規定の改正に際して、業界の内部で提案はしてみたが、やはり市場には「魚河岸のセリ場は早朝から開くモノ」という考えが強く、受け入れられませんでした。
 規制緩和の時代です。IT革命の時代でもあります。冷蔵倉庫における「品見、検品」、入荷情報などをもとにITを駆使して取引する、そういう手法を先入観にとらわれずに考えてゆけば、現実に即した市場の運営のアイデアも出てくるのではないでしょうか。
(これについては私の私案があります。機会があればご披露します。)


干物のセリ取引は1週間で中断!   鮮魚のセリ場も黄信号!
 さて、前回お伝えした11日に復活した鮮魚のセリ取引ですが、早くも先行き不透明になってきました。
 復活した鮮魚のセリでは、話題先行で周囲の関心は高かったものの、仲卸が要求してセリに上場させた50%の魚のうち、初日から売れ残りが大量に発生し、あらためて仲卸の販売力の低下を印象付ける結果となってしまいました。
 せっかく復活したセリ場ですが、周囲の評価は厳しいものがあって、翌朝の日本経済新聞などは「規制緩和の流れに逆行する事を仲卸のエゴで押し付けている。」といった否定的な論調で報道していました。
 実際セリ復活から1週間たった現在、出荷した魚が売れ残って希望する値が取れない出荷者は他市場に移り、必要な荷が揃わない量販店の一部は他市場からの調達に切り替えるなど”築地離れ”の動きさえ現れるようになってしまいました。
 この事態を受けて、荷受と仲卸の話あいが持たれる事になっていますが、特にセリ上場の割合の%などの取り決めで難しい事になりそうです。
 このままセリが中断などという事にでもなれば、築地市場でセリを行なうという事が無理という事を確認する”駄目押し”になってしまいます。もしそうなれば市場で働く者の一人として、悲しい事態と言えます。
 鮮魚と同じく今月1日から、あじの開きなどの干物類に関してもセリ取引が復活していました。
 が・・・しかし・・・。
 始まってたった1週間で元の相対取引きに逆戻りしてしまいました。
 やはり買い手の仲卸が以前のような販売力がなく、売れ残りの荷をもて余した荷受がギブアップ宣言をしたようです。

 
  無理な事は続かない
 仲卸の立場からすると、今回の新市場法施行の機会に、失いかけた市場流通の主導権を再び取り返したいという意図は確かにあります。しかし現実は更に先に進んでしまっていて、その流れにサオ刺そうとしても難しいのが現実なのです。
 今回の一連の動きで特に気になるのは、「入荷した荷の〇%はセリにかけて仲卸に扱わせろ。」といういわゆる2号物品に関する動きでした。
 また「先取り」をすこしでも食い止めたいという意図は良いとしても、新しいセリ時間では全く中途半端といえます。
 量販店に本格的に対応している市場外の業者は、物流業者も含めて深夜からの業務を厭わないでやっているのです。それに比べれば市場の仲卸の意識はまだまだ甘いと言わざるを得ません。
 仲卸も生活がかかって必至ですが、荷受もまた利潤を追求する民間企業です。荷主も確実に希望する値段で売ってくれる市場にしか出荷しないと言う事で、それぞれの事情があります。
 仲卸が自分の立場だけで、市場のシェア〇%をよこせ、といったゴリ押し的要求をしてもそれは長続きしない、実力からして無理な話といえます。
 
 私は現在の仲卸の立場で、荷受に要求できる事があるとすれば、それは「全ての取引の情報を公開して、取引の公正性を証明しろ」という要求だと考えます。
 このままだと、下手をすると仲卸は仲卸であるという理由だけで量販店など大量に販売が見込め、将来の成長も見込める末端企業に比べて不利な、差別的な扱いを受ける可能性さえあるような気がします。今の制度のままだと仮にそういう事態になっても仲卸には対抗するどころか、取引きの実態を把握する手段さえもないのです。
 荷受という業態がかつての単純な”受託業者”という性格から、より主体的に利潤を追求する”商社化”していく過程ではこの変化は必然的に起こり得る、仲卸が何を言おうと荷受はメリットのある事は結局、何でもやるのだという事は覚悟しておいた方が良いということです。

 これを防ぎ、仲卸の最低限の権利を担保するのは”完全な情報公開”しかないと私は考えています。
 これについては次回 「セリ場の値段」に続きます。


この話題の続きへ⇒

(北田喜之助)


魚がし北田のホームへもどる

この記事の感想をメール

北田水産株式会社
All rights are reserved.
〒104 東京都中央区勝どき5−11−11
Tel: 03-3531-5811(代表)

Fax:03-3531-7272