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タラコ原卵暴騰。

平成12年4月8日

原卵価格の暴騰
 既にご承知の通り、今シーズンの「たらこ」は冷凍原卵の暴騰という異常事態に直面し、混乱を極めています。
 これは、アリューシャン海域のスケトウ漁が不漁で、アラスカ産のDAP物と呼ばれる冷凍原卵の供給が大幅に減り、これを受けて行われたシアトルや釜山での入札で原卵相場が、かつて無い程の暴騰をしてしまったのが原因でした。
 たらこ原料の過半を占める輸入物が高騰する一方、国内産の原卵についても当初の豊漁が後半になって途絶え、羅臼地区の生産は激減するなど輸入物の減少を埋め合わせるまでには至らず、シーズン前半の噴火湾の豊漁が唯一の救いという状況でした。
 原卵相場については、ここに来てやや落ち着きを取り戻しつつあるものの、これから、たらこや明太子の原料として消化される原卵は、昨年の6割高のコストとなり、これをそのまま製品に転嫁すればkgあたり¥1,000以上の値上げをしなければならず、これは消費不況の現状では消費者に受け入れられる価格ではない事は言うまでもありません。

混乱するメーカー、流通業会
 たらこ原卵は今年の予想供給量約64,000t、その約半分が明太子の原料として消化され、半分が塩たらこの原料として消化されています。
 このうち「明太子」については、調味液に漬け込むなど加工度が高く、塩タラコに比べて付加価値が高く消費も安定していて、原料高騰に対する抵抗力は比較的強いと言えます。
 反対に「塩タラコ」のメーカーは大半が弱小な中小メーカーが多く、近年の原卵価格の高騰と販売不振で再生産もおぼつかない「息も絶え絶え」とう状態の業者が多いのが現状です。三陸の中小メーカーの多くが「塩タラコ」に見切りをつけて他の仕事へ転換を図っていると言われる程困窮しています。
 現在、塩タラコのメーカーの中でも、原卵を手当てして在庫する事のできる比較的大手のごく一部のメーカーのみが生産できる、という状況になっていて、原卵の在庫をする体力のない中小メーカーは完全にお手上げ状態となってしまっています。
 また比較的恵まれている明太子メーカーにしても、これだけの原卵高騰となればコストの吸収は難しく、収益に影響するのは必至と言えます。
 結局のところ、輸入する原卵の価格が高すぎるというのが諸悪の根源と言う事であり、海外から原卵を輸入している商社の買い付け姿勢に問題があるという事なのですが、この事は毎年のように繰り返し指摘され続けてきました。加工業者の経営と再生産が成り立つ原料価格を無視した価格での輸入を行なう商社に対する怨嗟の声は近年大きくなる一方だったのです。
 そして今年の場合は、「高すぎる買い付け」は輸入商社だけでなく、とうとうユーザーであるはずの明太子メーカーまでもが原卵の買い付けに走り回るという一種のフィーバー状態となってしまいました。「大手明太子メーカーK社は年間使用量の二倍の原料を買い付けている。」「築地の仲卸I社は近海原卵を買い付けに北海道まで手を伸ばしたそうだ。」といった噂が業者の間で流れる事態にまで至っています。
 もともとタラコ原卵は「スリミ」と共に投機商材となりやすい商材ではありますが、今回の暴騰はやはり特別異常なものといえます。

困惑する消費地市場
 さて、前述のとおり、原卵価格の高騰を製品に転嫁すると¥1000以上の値上げとなるのですが、この消費不況の折り製品の値上げがスンナリ通る程今の市場は甘くありません。
 一刻も早く値上げしたいメーカーの意向を受けて、築地の荷受各社も少しずつ値上げのアナウンスを始めたところですが、今のところ何をどの程度値上げすればよいのか、またそれが消費者に通るものなのかどうか誰にもわからないという状態に陥っています。
 仲卸の間からは、「この売れない時に値上げなどもっての外、何を考えているんだ!。」といった怒りの声が主に若手からあがっています。
 メーカーや荷受も、値上げはしなければならないが反応が怖い。様子を見ながら恐る恐るといった調子で、消費地は全く困惑した状態と言えます。

 このような状況の中、当社としては「北田本店のオススメ」でもご紹介したように、高騰した冷凍原卵との価値観の比較で割安感の出てきた前浜原料の製品を、とりあえず販売してこの状況に対応しています。しかしこれも安値の前浜原卵の在庫がある分までで、先行きは全く不透明と言わざるを得ない状態です。

結局、不況の勝ちか?。
 小売の販売の現場からすると、たらこを始めとして魚卵製品の販売は近年ジリ貧状態となっています。当社「魚がし北田」でもたらこを始め魚卵の売り上げのシェアは大きく減っているのが現実で、この状態で更に値上げとでもなれば販売は大きく落ち込むのは目に見えています。
 今シーズン、同様に不漁のため高値だった「かに」も、当初の高値相場が販売不振につながり、結局「不況の勝ち!」となったように、供給サイドの事情はどうあれ、「消費者は高いモノは買わない」という傾向が強まっています。
 消費者から、惣菜としての「たらこ」や「明太子」が見捨てられないよう、業界全体の冷静な対応を願いたいものです。

(北田喜之助)


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