目次へ
               築地市場や水産物流通に関する話題、魚や旨い物に関する話題など

冷蔵倉庫業界の中堅幹部研修会
平成12年2月16日

 今までこのHPでは紹介していませんでしたが、北田水産グループにはロジスティクス部門として竃k冷があり、現在勝どき工場(5、850t)と平和島工場(6,000t)の2工場を運営しています。
 竃k冷では冷蔵倉庫業者として水産物、畜産物などの保管、更に流通加工などの業務を通じ、商社、食品メーカー、水産各社などの皆様に御利用いただいています。
 今回はこの冷蔵倉庫業者の業界団体「日本冷蔵倉庫協会」の中の「中小企業対策専門委員会」が平成12年1月21日から23日にかけて行なった「中堅幹部社員研修会の様子をレポートします。

竃k冷  平和島工場(6,000t)

冷蔵倉庫業界

 「冷蔵倉庫」とは畜肉や水産物、冷凍野菜などを冷蔵しながら(当社の場合-26℃)保管する事を仕事としている業者のことで、「冷蔵」という特性がある事で一般的な「普通倉庫」と区別されます。
 日本全国にはこの冷蔵倉庫業を行なっている会社が約1000社ほどあり、設備能力は近年1000万tを超える程になっています。またこの約1000社のうち大手と呼ばれるのは潟jチレイを筆頭に大手水産会社系、商社系などを除けばごく一部にすぎず、大半の企業は中小零細な業者で占められているという業界です。

 今回の研修会は、日本冷蔵倉庫協会の下部組織「中小企業対策専門委員会」のメンバーが手作りで行なっている物で、昨年に続く第二回として、去る1月21〜23日の3日間ニチレイ雪ケ谷研修センターで行なわれました。
 この研修会では、自社で研修などを行なう機会の少ない中小の企業の中から参加者を募り、全国から総勢66名と昨年を上回る参加者がありました。この中には20代後半から50代半ばの工場長クラスに至るまで、年齢も地域もさまざまな人達の参加となりました。
 そしてこの研修会を実際に企画運営するのは、業界の事務局と冷蔵倉庫会社の若手経営者の有志の人達(つまり現役の社長!)で参加者にとっては貴重な(迷惑な?!)体験だったはずです。
 会場は潟jチレイの雪谷研修センターの、まるでホテルを思わせる豪華な施設の中、2泊3日泊り込みでのハードなスケジュールで行なわれました。実行委員の我々もクタクタになりましたが、参加者もさぞ大変だったろうと思います。
 研修は初日、日本冷蔵倉庫協会の金田会長の挨拶にはじまり、テーマ毎に講師をお招きして講演を行ない、日常の実務に役立つテーマを中心に勉強できるように組み立てられました。
 講演の内容は
 日本水産鰍フ原田純一氏  :経営諸表の見方と分析
 鞄通総合研究所の山口宗明氏:倉庫業務の基礎-見積もりから契約まで。
 五十嵐冷蔵梶@五十嵐社長:経営者が期待する人材
など、外から講師をお招きしてのものもありましたが、大半は私たち実行委員がそれぞれの得意分野を分担して「手作り」で行ない、それだけに内容も非常に実務的で実践的なものでした。
 潟tリゴ(大阪)の西願社長(当委員会の会長)が中心となり、河合製氷冷蔵(福岡)の河合社長らが、「提案型見積書の作成」や「自社の経営実態のとらえ方考え方」などを講演し、経営の第一線の生々しい貴重な話を聞くことができました。
 また潟Aイセン(神奈川)の大石社長と私(北田)は「冷蔵倉庫におけるパソコンとインターネットの活用事例」のとりまとめと発表を担当しました。 

対抗討論会

白熱する「対抗討論会」 左が荷主側、右は冷蔵倉庫 講演する潟tリゴ 西願社長
 そしてこの研修会での最大のイベントは、何と言っても各班に分かれての「対抗討論」でしょう。
 「対抗討論」とは総勢66名を11名づつ6つの班に分け、例えば右のようなケーススタデイについて、一方が荷主側、一方が冷蔵倉庫側に扮してそれぞれの立場を主張し、討論するというものです。そして他の班と実行委員が荷主、冷蔵倉庫のどちらが優勢だったかを判定するという形で行なわれました。
 討論のテーマが、日常の業務で実際に起こり得るものばかりという事もあり、参加者は非常に真剣で熱い論戦がくりひろげられました。対抗討論も回が進むと、熱心な参加者の中には寝る間も惜しんで予習するという姿も見られるようになり、荷主や冷蔵倉庫の役になりきっての名演?!が見られました。
 勝敗については、金銭的にどちらが勝った負けたという事よりも、問題の本質を正確に認識しているかどうか、それに対する論理の組み立てが適正かどうか、主張に説得力があるかどうか、話し方の良し悪しと言った事項を総合的に判断して決まって行きました。
 それぞれの班ごとに担当の運営委員がつき、要点のみの指導を行いましたが、私の担当した2班(リーダー:湘南倉庫冷蔵の中嶋輝氏)は大健闘したものの惜しくも決勝で敗れ準優勝となりました。
 
 実際に指導しながら自分も体験してみて、この対抗討論というやり方は、実務に即した内容で行なうと非常にリアルで役に立つ手法だと感じました。冷蔵倉庫以外でも、例えば流通の現場に置き換えて「卸業者とスーパーのトラブル」といった内容の研修も面白いかもしれません。
 
 (右の問題、あなたならどう考えますか?。)

 対抗討論のケーススタデイの例

(賞味期限切れ商品の出荷に伴うトラブル)
●荷主A社在庫品さといも(10kg入り)100ケース出庫。
 A社の得意先B社へ運送会社C社便にて配送、B社受け取り確認印あり。
●B社よりD市学校給食に20ケース納品。
 給食使用時に10ケースの賞味期限切れを発見。
 B社在庫80ケースのうち40ケースの賞味期限切れ発見。
●D市は10ケース分生鮮さといもを別途調達。
 B社に対し納入停止1ヶ月の制裁措置。
 B社はD市学校給食の売上1000万円/月をA社に請求。
●この「さといも」は2000ケースを入庫時に賞味期限別に2口に仕分けしたが、そのうち一口が出庫時点で賞味期限切れだった。
 100ケース出庫時に、その口から50ケースが混入した模様。
---------------------------------------
@A社より冷蔵倉庫会社に対し解決依頼あり。・その方法は?。
A当社(冷蔵倉庫会社)の損失は?。
--------------------------------
  対抗討論の時間割
先行(荷主側)立論   :3分
後攻(倉庫側)立論   :3分
討論            :5分
倉庫側の結論      :3分
荷主側の結論      :3分

進化する冷蔵倉庫会社の業務
 冷蔵倉庫業界はここ数年来、かつて無い程の不況に苦しんでいます。
 基本的な原因はバブル期以来の新増設による設備過剰と、ダンピング合戦の結果としての実勢料金の低下と言われています。しかしそれ以外にも流通の変化に伴う構造的な問題も大きいと言えます。
 一昔前の冷蔵倉庫は、大量の貨物を一度に入庫し、月単位の保管料を頂いて営業しているというスタイルが殆どでした。しかし近年徐々に「流通型」と呼ばれるスタイルの冷蔵倉庫が増え始め、そこでは従来からの単純な「保管」業務だけでなく、大手食品メーカーやスーパーと業務提携して、ピッキングや流通加工などの業務までを請け負う業者も増えて来ました。
 荷主側のニーズとしてはS.C.M(サプライチェーンマネジメント)や、大手スーパーや外食などが物流業務を冷蔵倉庫業者に全面委託する3PL(サードパーテイ・ロジステイクス)などの要望が多く、実際にそういう形のビジネスを行なっている業者も多くなりました。
 冷蔵倉庫の業務が進化したという事ですが、反面、今までにない問題も多くなり、まだそれに完全に対応できていないというのが我々冷蔵倉庫業者の現状と言えます。
 例えば、従来の保管だけであれば「保管料」「入出庫料」の管理だけで良かったのですが、ピッキングやラベル添付、伝票発行、更には配送まで請け負うという事になれば、そのコストを何らかの形で頂かなければならないわけですが、その際、決まった形での「業界標準」といったものが未だ整備されていないといった問題があります。 
 
 また、近年のインターネットやS.C.M技術の急速な進展は、流通段階での中間在庫を削減していく効果があり、現在の我々はそのような状況に対応する準備が出来ているとはとても言えない状況です。
 現実、最近新設した「流通型」の冷蔵倉庫は、ドッグシェルターはもちろんの事、完全自動倉庫やコンピューター管理の分荷設備など目を見張る程立派なものです。しかし実際には運用の面でも経営面でも多くの問題を抱えているのも事実なのです。

 この研修の最終日、参加者と反省会をしていて、「現在の仕事の悩みは何か?」という話になりました。そこで印象的だったのは、最新の自動化した冷蔵倉庫からの参加者の最大の悩みが「人の問題」だったという事でした。また「技術が進歩しても経営者クラスの考え方が昔の保管型の時代と全く変わっていない、」という鋭い指摘もありました。
 どんなに時代が変わって、設備が良くなり、通信技術が進歩しても、最後まで問題になるのはやはり「人」の問題という事なのでしょうか。

(北田喜之助)


魚がし北田のホームへもどる

この記事の感想をメール

北田水産株式会社
All rights are reserved.
〒104 東京都中央区勝どき5−11−11
Tel: 03-3531-5811(代表)

Fax:03-3531-7272