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               築地市場や水産物流通に関する話題、魚や旨い物に関する話題など

東卸の伊藤理事長再選(2)
平成12年2月5日

速報伊藤理事長は1月31日に、東卸の新しい執行部体制を発表しました。
 注目されていた副理事長には、中嶋同氏が留任(当店の属する「北洋物業界」の会長です)、杉山澄雄氏鈴木荘平氏の2名が新任されました。このうち杉山氏は、増田前理事長時代からの「再整備委員長」であり一環して築地での再整備を主張してこられた方です。
 移転か再整備かをめぐって、組合運営はこれからも難しい局面があるかもしれませんが、間違っても「組合の分裂」などという事態にならないように願いたいものです。

さて前回の続きです。

 いったん「豊洲への移転」の可能性が浮上してから、平成9年〜10年春先までの動きは急でした。
 平成9年12月には東卸の再整備委員会でも激論の末に「移転の可能性も視野に入れて検討する。」という了承がなされました。一方市場の水産大卸の組合「都水卸協」(会長:関本幸也氏)でも再開発検討委員会で築地か移転かの比較検討を行なうという事になりました。
 また築地の青果の業界では、もともとの再整備計画で、青果部門の配置が立体化した2階に上がる事になっていた事に対する不満もあって、かなり早い時期から「移転」の方向に傾いて行ったようです。
 そして平成10年の1月には買荷保管業界から「買荷保管所の工事はやめてもらいたい。」という要望が出るに至り、これがローリング工事の種地として欠かせないものだったため、当初の計画は完全に頓挫してしまったのでした。
 このような状況にあっても、東京都は築地での再整備を行なうというタテマエを崩さず、再整備の見直し案を何度も検討し業界調整の末また見直すという事の繰り返しとなって時間だけが浪費されていきました。そしてついに平成10年9月になってとうとう、東京都も「現在地での立体化した再整備は不可能。」という結論を出すに至りました。
 これに対して東卸の築地再整備派は、独自の「再整備計画」を作り、現在地での再整備に固執して現在に至っています。
 この間、東卸の組織内部のミゾは深くなる一方でした。
 増田理事長と出身母体の大物業界(マグロ扱いの仲卸の組合で業者の数が非常に多い。)はあくまで築地での再整備の立場。一方、伊藤、原、中嶋の3副理事は移転推進の立場となり、立場の分かれた執行部はまともな組合運営ができない状態になってしまいました。
 そして東京都や農水省などからも、内部分裂のため相手にされず、特に増田理事長は都に裏切られたという思いがあるのか、会議の席などで都の担当者を罵倒するなど非常に険悪で危険な状態になってしまいました。
 この膠着した状況を打開するため、平成10年11月、水産仲卸959事業者全員を対象に、移転か再整備かの「意向調査」が行なわれその結果、現在地派が57%と優勢だったため、その結果をうけて「築地での再整備」が東卸としての機関決定となりました。
 一口に仲卸といっても、大手量販店を対象にしている大型企業から、地下鉄で買出しに来る近隣の顧客に頼る零細業者までさまざまで、「どうなるかわからない未来の話より目先の営業が大事」という気持ちの業者が多かったのでしょうか。移転推進派には残念な結果でしたが、当時は情報不足、認識のギャップもあり仕方の無い事だったのかもしれません。
 この「築地での再整備」という機関決定は、その後、移転問題についての東卸内部の「ねじれ現象」の原因となり後々尾をひく事になりました。

増田理事長解任と内紛

 以上のような経過で築地市場の仲卸の組合「東卸」は築地での再整備を機関決定とし、築地市場を利用している魚商などの団体「買出し人組合」もこれに従って築地再整備の立場を表明する事になりました。
 しかし一方で市場の大半を占める「青果」「水産大卸」「関連事業者」など他の業界団体は移転を主張し、肝心の東京都は「関係する業界全ての賛成がなければ豊洲移転はしない。」という方針であり、東京都から主導して移転を働きかけるという事もしませんでした。
 一方、築地での再整備については、東卸は独自の再整備案を主張するものの、他業界と合意した計画案があるわけでもなく、予算もなく工事は中断したままという全く情けない状態になってしまったのでした。

 そして平成11年4月、東卸の増田理事長が理事会において40名中22名の理事により解任されるという事件が起こりました。
 その時は事の成り行きが唐突だっただけに、事情を知らない一般の組合員には「何故?」という疑問もわきました。
 後にわかった事ですが事の原因には
@増田理事長が職権を乱用して、自分の店(三藤商店)の多額の(8000万円超)決済金の返済期日を延ばさせて組合に損害を与えた事。
A交際費の支出が多額(最大3000万円/年)であり使途に関しても自店の商品を使うなど不明朗な点がある。
というような事実があったという事です。また、両派の中傷合戦の過程で、お互いにいろいろな話が飛び交ったのも事実です。
 私はこのような事が事実かどうか知る立場にいませんが、他にも余りにも長い任期になった事で、「長期政権の弊害」が多々あったという話もあります。
私は個人的にも増田氏を良く存知上げており、お世話になった事もあり、この事を聞かされた時はショックを覚え「まさか?」と思いました。そして今でも本当にこのような事があったのか、どの程度非難されるべき事実があったのか、本当のところ良くわかりません。
 しかしこの時の解任劇の本質は、かたくなに再整備に固執し、都の役人や組合の他の3人の副理事ともまともに話をしなくなった増田理事長に対し、22名の理事が信用をなくしたという、唯それだけの事と考えると解りやすいと思います。
 
 さて、解任された増田氏と行動を供にしてきた人達はこの解任劇に対し巻き返しに転じ、解任の撤回を求めて行動し裁判沙汰寸前まで至り、築地の仲卸を真っ二つに割っての勢力争いとなりました。これに移転問題がからんで、ますます収拾のつかない事態となってしまいました。
 そして増田派の意向を受けた形で、理事(40名)の選出権のある総代(127名)の選挙が行なわれ、私もこの時初めてこの中に頭を突っ込む事になりました。
 そして12月20日、年末繁忙期の最中に行なわれた総代会で、理事長以下、理事監事全員の解任が決議され、改めて選挙という事になりました。
 結局、これを受けて行なわれた理事40名の選挙と、理事による理事長の選出で伊藤氏が再任され、副理事長は前述のような結果となり、昨年からの激しい内紛も一応の決着がついたという事になります。

 終わってみれば(まだ終わっていないのかもしれませんが?)長い時間と労力を費やしただけで、全く得るもののない、むなしい無用の争いだったというのが実感です。
 

ハード(市場の施設)よりソフト(流通の変化)が重要だ。
 今回の争いは築地市場の「再整備か移転か」という路線対立でもあったわけですが、仲卸の組合が内紛に忙殺されている間に、我々仲卸にとってのもっと重要な変化がありました。
 それは大正時代に制定されて以来、今の市場運営の基本となっていた「卸売市場法」が改正された事です。
 この改正では、今まで形骸化が指摘されてきたとは言え、「セリ原則」や買参、仲卸の区分などを買い受け人として同列に扱うなど、市場の移転云々よりもっと深刻な内容を含んだ変化を含んでいます。
 「規制緩和」や「現状に合わせた改正」というタテマエですが、この改正によって仲卸の存立の基盤になっていた特権のかなりの部分が、実態としてだけでなく、制度面でも失われてしまったという事は事実であり、この事は我々の将来に非常に大きく影響してくると思われます。
 そして築地のみならず全国の市場の指導的立場にある筈の築地の仲卸は、この法律が審議され、成立し都の条例で運用される、その大事な時間に内紛に明け暮れ、全くこれに関われなかった、この事実は後々仲卸にとって大きな問題となってくると思います。
 
 遅すぎたかもしれませんが、市場の移転再整備といった(ハード)ばかりでなく、肝心の流通や取引の変化(ソフト)の変化にも目を向け、これに仲卸はどう対応すれば良いのか、早急に考える必要があるのではないでしょうか。

 現在、築地市場の仲卸は大半が赤字経営という苦境に陥っています。仲卸にとって、このような厳しい状況が今後も続くのであれば、十数年後といわれる移転や再整備の完成時までに、いったい何件の仲卸が生き残る事ができるのか疑問に思います。
 仲卸にとってのこの苦境の原因は、市場が古いからというよりも、根本的には「流通の変化」のためであり、そうだとすれば新しい市場がどこに出来ようとダメになる仲卸はやはりダメになる、そうならないためには仲卸が生き残れるような新しいルールを早急に作る必要があると思うのですがいかがでしょうか。

リンク

http://www.tsukiji-market.or.jp/ 築地市場協会 いわゆる「場内」のホームページ。市場協会という団体のホームページで、卸売市場の基本的なしくみの解説もあります。
http://www.city.chuo.tokyo.jp/ 中央区 築地市場の移転に断固反対している地元中央区のホームページ。
移転の賛否を問うアンケートや、掲示板もあります。
http://plaza5.mbn.or.jp/~jdc/index.html 魚河岸-やっちゃ場 卸売市場の現状と問題点。さらに今回の問題の背景になる市場の事情を、非常に正確にかつ要領良くまとめて解説しています。
 市場の現状の理解にぜひ一読をオススメします。

(北田喜之助)


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